6月4日は、NJPサントリーホール定期演奏会。すこし空席が多く、全体では8割程度の入りだったかなぁ・・・ワタシの周囲だけで見ると7割以下だったかもしれないけど、・・・そんな感じ。だから世間一般的には注目ではない部類のコンサートだあったと思われるのだけど、NJPの触れ込みによると「ヨーロッパオペラ界で飛ぶ鳥落とす勢い、と同時に問題児(?)スピノジが登場、初来日、よって日本デビューが新日本フィル定期公演、しかもこのサントリーホール定期限定である。」とのこと。その真価はいかに。
モーツァルト作曲:歌劇『コジ・ファン・トゥッテ』 序曲
モーツァルト作曲:歌劇『フィガロの結婚』より『恋とはどんなものかしら』
モーツァルト作曲:歌劇『コジ・ファン・トゥッテ』より『この心の中の苛立ち、鎮めがたい思いよ』
ハイドン作曲:交響曲第83番ト短調『雌鶏』Hob.I-83
ロッシーニ作曲:歌劇『セヴィリアの理髪師』序曲
ロッシーニ作曲:歌劇『アルジェのイタリア女』より『むごい運命よ、はかない恋よ』
ロッシーニ作曲:歌劇『セヴィリアの理髪師』より『今の歌声は』
ハイドン作曲:交響曲第82番ハ長調『熊』 Hob. I-82
指揮:ジャン=クリストフ・スピノジ
メゾ・ソプラノ:リナート・シャハム
まず、スピノジのステージへの登場。スリムで長身、ダークなスーツ姿なのに、ちょっとカジュアルな空気感を漂わせるのは、颯爽とした軽快な足取りとスマイルゆえだろうか。実際には1964年生まれの46歳らしいけど、それを知らなければ20代後半〜30代の青年指揮者に見えるだろう。指揮台でのタクトを振る姿は実に表情豊かで、私の席からはもちろん後姿しか見えないけど、ダンシングタクトって感じ。日本人指揮者だと、井上みっちー系かもww ちなみに広上系ではないwww
そして、そのタクトから奏でられる音楽には、強いリズム感と生命力が宿される。食事の席でBGM風に流されるさらさらのモーツァルトやロッシーニではなく、ダンスホールで踊っている人たちが盛り上がったときに奏でられるノリノリの音楽なのだ。オケの持つダイナミックレンジを、ピアニッシモ方向に拡大し、聞こえるか聞こえないかギリギリのピアニッシモから急峻に駆け上がるクレッシェンド、そして明確に強調されたリズム感、そして絶妙なアンサンブル、・・・もしかしたら正統的なモーツァルトやロッシーニとは違うのだろうけど、音楽をエンターテイメントと考えれば、納得できる演奏だ。
メゾのリナート・シャハムは、艶っぽい声の持ち主で、どちらかというとモーツァルトよりもロッシーニのほうが似合う。ステージでの立ち振る舞いは、セミステージ形式に近く、スピノジとのユーモラスな掛け合いもあって、やり過ぎと思えるほどww聴衆を楽しませてくれる。
「雌鳥」で出だしを振り間違える?トラブルはあったものの、トータルで凄く刺激的かつ楽しめるコンサートであったことは間違いない。「熊」では、終わりそうで終わらない第4楽章で、ワザとタクトを下ろして聴衆の拍手を誘発するイタズラまでして、楽しませてくれたw
いや、このスピノジのコンサートが、この一夜だけというのはあまりにももったいない。この人の音楽は、録音ではぜったいに伝わらないものを持っている。その意味ではチェルカスキーと同じ、エンターティナータイプの音楽家だ。次回の来日が実に楽しみだ。