5月31日(日)は新国立劇場の「アラベッラ」を見に行った。この演目は、R・シュトラウスの歌劇の中では上演頻度が少なく、私も新国による2010年の初演以来の2度目。日本初演も1988年のバイエルン国立歌劇場の上演だから、R・シュトラウスの作品としては異様に遅い初演だった。それだけ上演するのが難しい演目なのかもしれない・・・、営業的な意味も含めて。
指揮:ベルトラン・ド・ビリー
演出・美術・照明:フィリップ・アルロー
衣裳:森 英恵
出演:
ヴァルトナー伯爵/妻屋秀和
アデライデ/竹本節子
アラベッラ/アンナ・ガブラー
ズデンカ/アニヤ=ニーナ・バーマン
マンドリカ/ヴォルフガング・コッホ
マッテオ/マルティン・ニーヴァル
エレメル伯爵/望月哲也
ドミニク伯爵/萩原 潤
ラモラル伯爵/大久保光哉
フィアッカミッリ/安井陽子
カルタ占い/与田朝子
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
このアルロー版による演出を見るのは前述のように2度目なのだが、正直言ってこの演出の青い色彩感はあまり好きではない。青と白というと、今様に言えば「アナと雪の女王」的な雰囲気もあるのだが、この物語は19世紀の没落貴族のストーリー。青い舞台は、それらしい重厚感も感じられない。もちろん現代的なポップな演出であれば、それはそれで一つの指向性ではあるのだが、衣装だけは19世紀的なので統一感が感じられないのだ。
歌手は、どのキャストもスキのない出来栄え。主要キャストの妻屋、竹本は、外国人の客演キャストと比べても全く遜色のない内容だった。その中でも特筆すべきは、マンドリカのヴォルフガング・コッホで、粗野な成金ぶりは「はまり役」。
やや残念だったのはオーケストラ。第一幕・第二幕の音色には、R・シュトラウス的な室内楽的な精緻さが感じらない。R・シュトラウスのオペラは、官能的な管弦楽が生命線だから、これが決まらないとオペラの魅力が伝わってこない。その魅力が現れはじめたのは第3幕からで、結果的に第3幕は非常に魅力的な舞台になった。アラベッラとマンドリカの二重唱の美しさはこのオペラの白眉であり、有名なグラスを割るシーンにも心奪われた。
ま、逆に言ってしまうと、良かったのは第3幕だけだったのだが、弦楽器の上昇線と下降線が織りなすその美しさ、それがたった一瞬であっても満足感があるのがR・シュトラウスのオペラの特質なのである。