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さて本題。2月14日のバレンタインデー、・・・・まぁ、なんでこんな日にオペラシティが休刊日になるんだろうね。年1回の電気保安点検が義務付けられているのは知ってるけど、新国立位劇場の公演日で、しかもバレンタインデー、・・・休館で落胆した人もいるんじゃないの?と推察してみる。でも、上演されたのがワーグナー、しかも「ジークフリート」となると、デートでオペラという人はいないだろ・・・・、休館日をこの日に設定した人がここまで推察したとすれば、それはそれで慧眼かもしれないケドw
で、この日の新国立劇場は満員御礼。キース・ウォーナーの衝撃的な「リング」再演となれば、ここは何をおいても見ないわけにはいかない。そう思ったワタシも、今回は1万3千円ほどのB席をゲット。普段の国産オペラのチケットからすると高いけど、へたな外来歌劇団のオペラ公演よりは間違いなく質の高い上演が約束されている。今回は、この演出を見渡すことができる2階席をキープした。
新国のロビーも、ちょっと華やいだ雰囲気。1回のビュッフェではワーグナー特別メニューの提供も。
下の写真で、左側のお皿が「ジークフリート・プレート」1,200円、右側のパックに入っているのがブリュンヒルデ・ハーフ。どこらへんがジークフリート、ブリュンヒルデなんでしょか?汗
で、ノートゥング・デニッシュが下の写真。ま、これは何となく分かります。実際、この演出でのノートゥングのレシピだと、このデニッシュが完成するべきです。
まず開演前に目につくのは舞台上に置かれた金床だ。前奏曲がはじまるとヴォータンがその金床の上に工具箱を置き、続いてアルベリヒが毒薬の入った瓶を置く。それをミーメが手にとって「ジークフリート」の物語が始まるという趣向だ。
ミーメの家はポップな色調で、テレビや冷蔵庫、電子レンジなどの家電製品がそろっている。おしゃれな感じすらただよう生活スタイルだ。しかし各所に設置された防犯カメラが、ミーメの小心さを物語る。ジークフリートの部屋はミーメの家の2階で、衣装はスーパーマンのシャツにオーバーオール。部屋の中に置かれたぬいぐるみの数々が、ジークフリートの幼児性を強調している。ミーメとの関係性も、現代の父子家庭を象徴しているような感じだ。そんな家だから、溶鉱炉みたいなものが家の中にあるはずがない。
ジークフリートがどうやってノートゥングを打ち直すのかというと、ガラス製のボールの中に、砕けたノートゥングを摩り下ろし、そこにミルクと冷蔵庫から取り出した緑色の調味料?を加え、電子レンジでチン♪ さらに長細い鍋で熱して薄く細長い形につくり、それを鍋でたたいて伸ばして出来上がり。これならウチでもノートゥング」を作れそうという感じである(^_^;)。
第2幕は、ジグソーパズルの破片が堆積した森の中という設定だ。さすらい人とアルベリヒは、その森を見晴らすリゾートホテルに滞在中。大蛇は、ヘビというよりも不気味な巨木で、ゾンビが釣り下がっている。ジークフリートの闘いは、大蛇との闘いというよりは、むしろゾンビとの闘いといった趣きだ。
倒れた大蛇=ファフナーに同情して、ジークフリートが水筒から飲み物=ミーメが作った毒薬を与える展開も斬新。それにしてもゾンビあり、動物のきぐるみありなど、さまざまな小細工がこされていてとてもユニークだ小鳥も青い着ぐるみを着て登場し、2幕の最後にはそのきぐるみを脱ぎ去り、一見フルヌード、・・・・もちろん肌色のレオタードだろうけど、そして第3幕以降はシルバーの耐火服を着てジークフリートを案内するという趣向だ。
第3幕は、ヴァルハラ城のなかと思われる映画フィルムが散乱した部屋の中だ。フィルムは運命の糸のような位置づけなのだろう。そしてジグソーパズルの一欠片の上で眠るエルダ。残念ながら第3幕は演出上の見どころはやや少なめな印象だ。開演前から舞台の正面にすえられていた金床は、実はブリュンヒルデが眠る炎に山だったのかもしれない。さすらい人を倒したジークフリートは、その真っ赤な金床の山に向かう。
斬新だった・・・というか意外だったのは、真っ黒なカーテンの向こうで、つまり客席から見えない中で展開されるジークフリートとブリュンヒルデの出会いだ。これまで必要以上なまでに説明的だった演出が、ここでは逆に観客の想像の世界に委ねられる。
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この日の上演は歌手はサイコー。ほとんど申し分ない高水準だ。初演時も歌ったクリスティアン・フランツの輝かしい声、小心ながらずる賢いミーメ、黄昏ゆく神々への予感を感じるさすらい人、いずれも申し分ない。
ただし管弦楽には不満が残った。これは座席の位置にも問題があったのだと思うけど、特に弦楽器が薄く、ワーグナーらしいうねりも希薄。3階席や4階席ならきちんと聞こえたのかもしれないけど、ワタシが座った2階席後部には弦楽器の音が届かない、・・・・そんなもどかしさを感じながらの6時間だったのが、ちょっとザンネン。
【指 揮】ダン・エッティンガー
<初演スタッフ>
【演 出】キース・ウォーナー
【装置・衣裳】デヴィッド・フィールディング
【照 明】ヴォルフガング・ゲッベル
【振 付】クレア・グラスキン
【企 画】若杉 弘
【芸術監督代行】尾高忠明
【主 催】新国立劇場
【ジークフリート】クリスティアン・フランツ
【ミーメ】ヴォルフガング・シュミット
【さすらい人】ユッカ・ラジライネン
【アルベリヒ】ユルゲン・リン
【ファフナー】妻屋秀和
【エルダ】シモーネ・シュレーダー
【ブリュンヒルデ】イレーネ・テオリン
【森の小鳥】安井陽子
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団